「守って」というように差し出す小さな手
ゴールデンドゥードルのあずきさん、2歳。
東京から、初めてDog’sへお泊まりに来てくれました。あずきさんは、元保護犬です。
現在の飼い主さまから伺ったお話では、以前は珍しい犬種を何頭も飼っているお宅で、15頭ほどのワンちゃんたちと一緒に暮らしていたそうです。
トリミングや健康診断などは定期的に受けていたそうですが、一頭一頭がお散歩に出たり、外の世界に触れたりする機会はほとんどなく、主に家の中だけで過ごしていたとのこと。
そんな生活の中で、あずきさんは人や外の環境に慣れる機会が少ないまま育ったようです。
その様子を心配した獣医師さんが保護団体と協力し、元の飼い主さまと話し合いを重ねた末、保護されることになったと聞いています。そんな背景を持つ、あずきさん。
初めてDog’sへ来た時は、とにかく吠えました。うぅ~ワンワン、ワンワン。
その激しさに、「この状態で、お預かり中のお世話ができるだろうか……」と、私も少し不安になりました。でも、飼い主さまは、あずきさんのことをよく理解していらして、「これは“怖い、怖い”と言っているだけなんです。慣れれば大丈夫です」と教えてくださいました。
そうは言っても、あまりにも激しい吠え方。さて、どうしよう。
飼い主さまがお出かけになったあと、まずは無理に何かをしようとせず、ランでしばらく一緒に過ごすことにしました。すると少しずつ距離が縮まり……「よし!仲良くなれた!」
私は、すっかりそう思っていました。ところが・・・それは、ちょっと甘い考えだったようです。だんだん暑くなってきたので、あずきさんをエアコンの効いたお部屋へ入れることにしました。入る時は、自分からすんなりと入ってくれました。
「よかった。ここで少しお昼寝でもして、ゆっくり休めるかな」そう思い、しばらく静かに過ごしてもらうことにしました。そして2時間ほど経った頃。「そろそろ、またランに出て遊ぼうか」とお部屋へ迎えに行くと……あずきさんは、お部屋の隅で固まっていました。
声をかけても、まったく動きません。「ドアを開けておけば、そのうち自分から出てくるかな」そう思って、しばらくお部屋のドアを開けたままにしてみました。
ところが今度は、飼い主さまが置いていってくださったクレートの中へ入り、そのまま出てこなくなってしまいました。その姿を見た瞬間、「あぁ……失敗した」と思いました。
ランで少し仲良くなれたからといって、あずきさんがこの場所そのものに安心したわけではなかったのです。知らない場所。知らない匂い。知らない人。そして、飼い主さまがいないという状況。人や外の世界と関わる経験が少ないまま育ち、その後保護されたあずきさんにとって、私が思っている以上に大きな不安だったのかもしれません。こういう背景を持つワンちゃんだからこそ、もっともっと慎重に。
その後、飼い主さまに相談させていただきながら、あれこれ試してみました。そして、なんとか自分からお部屋を出てきてくれました。でも、怖い気持ちがなくなったわけではありません最初のように激しく吠えることはなくなりましたが、今度は私のそばに来て、何度も何度も「お手」をするようになりました。その姿が、「怖いよ」「どうしたらいいの?」「守って」と、私に訴えているように見えました。
あぁ、不安で仕方がないんだろうな……。
知らない場所で、頼りにしている飼い主さまもいない。何が起こるのかもわからない。
あずきさんにとっては、私たちが思う以上に大きな出来事なのだと思います。
「大丈夫だよ」と言葉で伝えても、それだけですぐに安心できるわけではありません。
だから今は、無理に慣れてもらおうとするのではなく、「ここでは嫌なことは起こらないよ」「怖かったら、そばにいるよ」そんなことを、あずきさん自身に少しずつ感じてもらうしかありません。せっかくDog’sに来てくれたのだから、少しでも安心して、少しでも穏やかに、そしてできれば、「ここも悪くないかも」と思って帰ってもらえたら。
そんな気持ちで、あずきさんとの時間を過ごしています。








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